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【新魔球「パワーカーブ」について】なぜ阪神ピアース・ジョンソン投手の「パワーカーブ」は空振りを奪えてしまうのか?

 

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こんにちはカズヤです。

 

今年日本野球界で話題になっている、「パワーカーブ」について書いていきます。

 

 

 

事の発端は、今年から新戦力として阪神に加わったピアースジョンソン投手が「パワーカーブ」を決め球に投げ、面白いように日本の強打者たちを空振りに取り、開幕から16試合連続無失点としっかりと結果も残し、「今まで日本で見たことのない変化球」だとして話題になり始めました。

 

この記事を書いている今日までもジョンソン投手は、28試合を投げ防御率0点台と、

阪神には欠かせない自慢の勝利の方程式のセットアッパーとして顕在しています。

ジョンソン投手の武器「パワーカーブ」はストレート50%に次いで投球割合の44%を占め、空振り率18.75%、被打率.073を記録しており、「カーブ」系の平均空振り率6.8%、被打率2割弱だと考えると驚異的な数字であると言えます。

 

 

ジョンソン投手が「パワーカーブ」を投げた背景

 

このボールはジョンソン投手が高校時代に投手コーチから「スライダー」として教わったものだそう。握りは当時から変わっておらず、「腕の角度やフォームの変化でこんな曲りになった。」と言っています。またある別のインタビューでは、「時計の針の1時から7時へ曲がり落ちていく感じで、縦振りで投げている」と言っています。

 

 

 

そもそも「パワーカーブ」とはどんな球なのか?

 

カーブと言われると日本では「抜いて」投げるボールという認識が常識であり、

球速は遅く、膨らみのある変化球であるため打者のタイミングをずらすことができる。しかし球速が遅く力が伝えられないボールのため、質が悪かったり、コースが甘ければホームランボールにもなりえる危険な球でもある。そのため投げる投手の多くは投球割合の多い勝負球ではなく、少ない割合で投げてカウントを整える場面に使うことが多い。

 

しかし「パワーカーブ」は球速が速いのが大きな特徴です。

そもそもこのボールはMLBで流行しているボールで、カウント球だけでなく勝負球としても使われてます。

そして急速に落ちるような軌道で打者に向かってくるため、打者は打球の速度や角度を出すことが非常に難しく、ゴロや空振りを量産できるんですね。

 

 

 

ジョンソン投手の「パワーカーブ」の投げ方と回転数

一般的に言われる「カーブ」は、中指をやや斜めに縫い目にかけて「抜いて」投げることによりいわゆる強いサイドスピンをかける必要があるため、膨らみのある遅いボールになることが通常です。

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一般的なカーブの握り

 

 

 

 

 

しかし、ジョンソン投手の握りを見てみると、、、

スライダーを握るように中指を縫い目に沿ってほぼ真っ直ぐにかけ、

更によく見ると薬指も立てて縫い目に当てています。

 

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これによって通常のカーブのように「抜いて」投げているわけではなく、ジョンソン投手のパワーカーブは「引っ掛けて」投げるボールだということが分かります。

ジョンソン投手はこのように「引っ掛けて」押し込むように投げることによって、ボールに回転数を生み、早い球速でしかも膨らみのない鋭い変化のあるカーブを投げていたということなんですね。

 

またジョンソン投手のパワーカーブのはトラックマンの計測によると3000回転近い回転数を記録しています。この回転数の多さによりストレート球速比85%を超える球速(130km/h以上)と鋭い落差だけでなく、大きな横の変化も生んでおり打者にとって更に見分けがつきにくく打ちにくいボールになっているということなんです。(3000回転近いボールは空振りが増えると言われています。)

 

 

日本人の強打者が苦労しているのはこの落差だけでなく、回転数によって生まれるスピードや横の大きな変化すにも手を焼いているということでもあるのだと思われます。

 

 

「パワーカーブ」を更に生かしているピッチトンネル

 

ジョンソン投手のもう一つすごいところは、「パワーカーブ」を投げることだけではないということです。

ただでさえ打ちにくい「パワーカーブ」を更に生かしている、制球力です。

 

 

 

バッターはピッチトンネルと呼ばれる、ホームベースから7.2メートルの空間にあると仮想される投手の投げたボールが通るトンネル(円)で、ボールの軌道や変化、コースを予測して打つため、投手はそのピッチトンネルから打者の予測をはずしたり大きく上回る球を投げれば抑える可能性は高くなります。

 

 

ジョンソン投手のすごいのは、高い制球力でピッチトンネルの同じ場所にボールを意図的に集め、打者の見極めを更にしずらくしているということです。

パワーカーブで三振を取ったシーンなどを振り返っていただくと分かると思いますが、

ジョンソン投手はその前に投げたストレートと同じ高さ、軌道からパワーカーブを意図的に投げることにより、より打者はストレートとパワーカーブの見極めができにくく思わず振ってしまうということなんです。

 

このような高度なテクニックも併せ持っているため、今のようなピッチングや成績が必然的にあるのだと思われます。

 

 

 

これから「パワーカーブ」を持つ助っ人が主流になる?

 

これまでも日本でも助っ人として、元ヤクルトのオンドルセクという投手が「パワーカーブ」を持ち球にし、セットアッパーとして活躍しました。

 

が、ジョンソン投手と比べるて平均球速、空振り率を見ると一つ劣っています。

「パワーカーブ」と言っても一つカギになるのは、回転数とそれを使うジョンソン投手のようなテクニック力があるかだと思われます。

MLBで「パワーカーブ」を持つ一流の投手は常時3000回転以上を記録し、回転数を意図的に変えるなど高度な技術を屈指し打者を翻弄しています。

最近ではソフトバンクにスチュワートという全米ドラフト上位で掛かった19歳投手を獲得し話題になりましたが、彼もパワーカーブを投げるようです。

 

パワーカーブを持つ助っ人はこれから間違いなく主流になってくると思いますが、「パワーカーブ」だけに固執して獲得するのも危険な気はします。先ほども書いた通り、ボールの質やどんなテクニックで投げて抑えているのかということ。

ジョンソン投手を見ていても本当にメジャーレベルのことを淡々とやっています。スチュワート投手も含め引き続き注目し、どのように投球しているのかという部分も着目したいですね。

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。